あの子の隣に座るコツ!
職員室の扉を開けようとしたアリサが、うっ、と声をあげ、足を止めた。



「もう来てる…」

「えぇっ?」


アリサの後ろから、扉についた窓を覗く。


警備員らしき人影が、徐々に近付いて来る。



「…なんて言い訳する?」

「諦めはやっ!」


「冗談よ。とりあえず隠れるしかなさそうね」



アリサは扉付近の机の下にささっと潜り込んだ。


「何してんの、早く隠れてっ」

「誰のせいで隠れることになったかよく考えろ」


「ユウ先輩の情報不足」


「…それはちょっと思ったけどサ」



そう言いながらアリサの隣の机に潜り込む。どうか見つかりませんように…。



ザザッ。


“…なんで逃げなかったのさ”


啓一が小声で尋ねてきた。


「女の子を見捨てて逃げるように育てられなかったんでね」


“冗談言ってる場合?見つかってもホントに知らないからね”


「他のみんなは?」


“無事脱出したよ”


「そりゃ何よりだ。もう切っていいか?無線の雑音でバレそう」



はぁ、と、無線の向こうからため息が聞こえた。


“カッコつけちゃって。ホントに見つからないでよ?”

「分かった分かった」



プチっ、と言う音と共に、通信が切れる。



同時に、ガララ、と、扉の開く音が聞こえた。



来た。



「ホントに見たのか」


40代くらいの、男の声が頭の上で聞こえた。


「はい。何か黒い影が動いたり、懐中電灯のような光がチカチカしたり」


今度は若い声。



やっぱり監視カメラがあったみたいだ。検証とかされたらバレないかな…?



逆側の扉もガラリと開いた。


「こっちのルートは異状なかったぞ」


「こっちもだ。全員で来る必要はなかったかな」



心臓が飛び出そうだ。目の前に警備員の足が何本も…。



「気のせいじゃないのか?」


別の警備員の声。


「そう言われると自信ないんですが」


若い声が言った。

完全にバレたって訳じゃなさそうだな。



「やり過ごせば何とか帰れそうね」

超がつく小声で、アリサが言った。


「あぁ」

俺も超がつく小声で返答する。勘違いですよ、若い声のヒト。だからさっさと出てけ!


「一応軽く調べるか…机の下とか」


ドキィッ。

漫画みたいな描写だが。
確かに俺の心臓がそう言った。
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