ヤサオトコ

 「迷っているんだ」


 沙幸が困り果てている栗崎の顔を、意地悪そうに見詰めている。


 「断りたいけど、断れない。図星でしょう」


 「本当に可愛いんだから」


 まるで、猫と鼠の関係。

 栗崎が困れば困るほど、沙幸はそれを楽しんでいるようだ。


 「考える時間を上げようか」
 「・・・」


 「実は、私、今日は危険日なんだ。栗崎君の子供を生んでもいいんだけど、困るよね」
 「えっ、ええ・・・」


 「栗崎君、避妊具買って来て貰えない。夜風にでも、当たれば・・・。その間に、腹を決めて欲しいの」
 「避妊具ですか」


 栗崎は考える時間が欲しかった。


 「いや?」
 「そうじゃないですけど」


 「私はホテルの部屋で待っているわね。部屋番号は、後でメールを送るわ」
 「わかりました」


 栗崎は大きく頷いた。







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