ヤサオトコ
ポロロン、ポロロン・・・。
沙幸の部屋の電話が鳴った。
「はい、707号室ですが」
「フロントです。橋爪様でございますか」
「はい、そうですけど・・・」
「連れのお客様から、伝言がございまして」
沙幸はフロントから伝言を聞くと、急いでドアを開けた。
ドアの下に、メモと征中丸が置かれている。
沙幸はメモに目を通した。そして、征中丸を手に取り、ラベルを丹念に見詰めた。
次に、沙幸は田原に携帯から電話を入れた。
「原ちゃん、橋爪やけど。ちょっと、聞きたい事があるねんけど、ええか」
「あっ、部長でっか。何でっしゃろ」
田原が電話に出た。
「栗崎君の事やけど」
「栗崎、な、何か失礼な事でも・・・」
田原の慌てたような声が、沙幸の耳に聞こえて来た。