ヤサオトコ
トントン。
栗崎がドアを叩いた。
会議室に入ると、栗崎は小さく頭を下げた。
「課長、何か用ですか」
「どうやった?」
田原がにやにやしながら尋ねた。
「何の事ですか」
栗崎は何の事か分からなかった。
「接待はうまくやってくれたやろな」
「接待の事ですか。それが・・・」
「それがどないしてん」
「実は、お腹が痛くなりまして・・・」
栗崎は嘘を押し通すつもりでいた。
「腹が痛うなったと。はは~ん。それで、部長から電話があったんか」
田原は、橋爪部長からの電話を思い出していた。