ヤサオトコ

 トントン。

 
 栗崎がドアを叩いた。


 会議室に入ると、栗崎は小さく頭を下げた。


 「課長、何か用ですか」
 「どうやった?」


 田原がにやにやしながら尋ねた。


 「何の事ですか」

 栗崎は何の事か分からなかった。


 「接待はうまくやってくれたやろな」
 「接待の事ですか。それが・・・」


 「それがどないしてん」
 「実は、お腹が痛くなりまして・・・」


 栗崎は嘘を押し通すつもりでいた。


 「腹が痛うなったと。はは~ん。それで、部長から電話があったんか」


 田原は、橋爪部長からの電話を思い出していた。







< 112 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop