ヤサオトコ

 「畜生!ピーピー男め」


 田原が栗崎を罵った。
 幾ら罵っても、田原の腹立たしさは、一向に治まらない。


 「チョコレート中毒で、くたばりやがれ」


 「女どもに、ウンチを撒き散らせ。ピーピーピイーと。くそ~」


 田原が汚い言葉を撒き散らした。



 カランカラン。


 田原はゴミ箱を、思い切り蹴り倒した。


 そこへ、事もあろうか、総務課の吉崎緑が現れた。
 彼女を密かに慕う田原は、胸の高鳴りを押さえることが出来なかった。


 「み、緑ちゃん」


 「お早うございます」

 緑が型通りに挨拶を。


 「お早う。・・・これだけ」
 「・・・」


 緑は極手短に挨拶を済ませた。


 「あれれ。どこに行くんや」


 緑は一目散に栗崎の机へ走って行った。


 机の上のチョコレートたちを、緑は迷う事無くゴミ箱へ。そして、自分のチョコレートを机の中央に置いた。







 
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