ヤサオトコ


 昼休みが終わる寸前に、栗崎は社に戻った。
 エレベータが3階に止まった。
 扉が開く。


 数人の女子社員の視線が、一斉に一点に。
 栗崎を見つけると、彼女たちは急いで走り出した。
 そして、栗崎の周りを取り囲んだ。


 「栗崎さん、待っていたのよ。これ、プレゼント」

 一番先頭の女子社員が言った。



 「私はネクタイ、きっと似合と思うわ」
 「栗崎君、今度、デイトしてな」


 二番目の女子社員が。



 「これ手作りのチョコレート」
 そして、耳元に小さく
 「中に、キーが・・・」


 次の女子社員が。


 「うちは、○○○。張り込んだからね」
 「あ、ありがとう」


 栗崎が最後の女子社員に礼を言った。


 栗崎は、彼女たちの迫力に圧倒されていた。
 それで、後退りしながら、皆に蚊の鳴くような声で何度も礼を言った。


 女子社員たちは目的を果たすと、慌てて自分の部署に帰って行った。







 
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