ヤサオトコ

 「課長、何か」
 「栗ちゃん、ご指名やで」


 田原は、いつになく上機嫌だ。



 (く、栗ちゃん)



 栗崎は心の中で呆れ果てていた。


 「誰がですか」
 「橋爪部長やがな」


 「えっ、橋爪部長が」
 「ようさん、仕事もらうんやで。頼りにしてまっせ」
 「あっ、はい」



(いつものようにいびらないのか。この変態怪獣が・・・。気持ち悪いわ。ば~か)


 栗崎は心の中で思っている事を、口に出したい心境だった。


 机の上を片付けると、栗崎は逃げるようにして会社を出た。


 「何はともあれ助かった」


 栗崎は、胸を撫で下ろしながらホーム食品へと向った。








 
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