ヤサオトコ

 栗崎は返答が出来なかった。


 「でも、一つだけ条件があるわ」


 沙幸が人差し指を、一本だけ高く上に上げた。


 「条件は何ですか」
 「前の約束を果たす事」


 (先日、ホテルですっぽかした事を言っているのか)


 栗崎は、あの日の事を思い浮かべていた。


 「・・・」
 「どう簡単でしょう」


 (やっぱりそうか。盛りの付いた雌豹が・・・)


 (これが、部長のチョコレートか。
 仕事で僕を買うつもりか。
 僕は、僕は、男娼じゃない)


 栗崎は腹立たしかった。




 暫し、沈黙。





 栗崎の心が決まった。







 
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