ヤサオトコ

 「田原さん、この事を知ったら、激怒するわよ。今度こそ、首よ」
 「でしょうね」

 栗原には、すでに覚悟は出来ていた。


 「こんな不景気な時代に、失業していいの」
 「良くは無いです。でも、決めた事ですから」


 「後悔するわよ」
 「いいです」


 「あなたも馬鹿ね」
 「・・・」


 栗崎は仕事を受注し、田原を見返したかった。
 でも、その為に、自分のプライドを捨てたくは無かった。


 「もう一度だけ聞くけど、本当にそれでいいのね」


 沙幸が念を押した。


 「結構です」


 栗崎には迷いは無かった。


 「勝手にしなさい」
 「そうさせて頂きます。では、部長、これで失礼します」


 栗崎は軽く頭を下げると、会議室を足早に立ち去った。






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