ヤサオトコ
「年なんて関係ないですよ」
栗崎が言った。
「そらそうやな。言っとくけど、娘付きやで」
「構いません」
「あんたより年上の娘やで」
房江が照れ臭そうに、でもはっきりと言った。
「僕には、娘になるのか、姉さんになるのか」
「あほやな。年上でも、娘やがな」
「あっそうか」
二人は見詰め合い笑い合った。
「それより、ほんまにええのんか」
「ええ」
「ほんまか」
「本当です」
「ほんまにほんまか」
「ほんまにほんまです」
「ほんまなんやな。夢とは、違うねんな」
房江は立ち上がり、鉄板越しに、栗崎をいきなり抱き締めた。