ヤサオトコ
「花嫁さんは、モデルみたいで、お綺麗でしたよ」
「花嫁さんて、誰の事や。うちが、花嫁さんやで」
房江が店主に文句を言った。
「お母さんは、ご冗談がお好きですね。そちらが、花嫁さんですよね」
「それは、子供や。うちが、花嫁さんやがな」
「えええええっ・・・」
店主は房江と野乃絵の顔を見て、ただただ驚いている。
そして、野乃絵に
「花嫁さんですよね」
と、もう一度、念を押した。
「いいえ」
野乃絵が首を横に振った。
「えっ、お母様が花嫁さんですか」
店主は房江の顔を見て、放心状態になっている。
「失礼を致しました。もう一度、撮り直しますので、ご勘弁を」
店主が直角に頭を下げた。
その後、ばつの悪い写真撮影が行われた。
店主も、栗崎も、房江も、撮影には熱が入らなかった。
野乃絵だけが、すこぶる機嫌が良かった。