ヤサオトコ
三人が布団を押入れから出し、それを敷き始めた。
「あんたは、あっちの部屋で寝てや」
房江が野乃絵に、目で合図をした。
「嫌やし。襖一つ隔てて寝るなんて、睡眠不足になるわ」
野乃絵は、当然これを拒否。
「ほんなら、どうすんねん」
「親子が三人。と言うたら川の字に決まっているでしょう」
「ええ、川の字!」
房江が川の字と言う言葉に、大きく反応した。
「子供が真ん中に。栗崎さん、ああ違うパパは、私の左側に。いいでしょう、パパ」
「僕はどこでも構いませんけど」
「あかん。あかん。死んでもあかん。真ん中は、うちが寝る」
房江が三つ並べた布団の中央に、我先にと寝転んだ。
すると、野乃絵が房江を両手で、ころころと横に転がした。
「可笑しいわ。お母ちゃんは、こっちよ。真ん中には、パパが来て」
栗崎はどうしたものか、どぎまぎしている。