ヤサオトコ
栗崎の視線の向こうに携帯電話がある。
栗崎は携帯を取り、上坂絢奈に電話を入れた。
「もしもし、栗崎です。いま、いい」
「栗崎さん。本当に栗崎さん」
電話の向こうから、絢奈の弾んだ声が聞こえて来た。
「ええ、栗崎ですが」
「少しならいいよ」
「今日、会えないか」
「今日」
「やっぱり駄目か」
「いいよ」
二人は梅田の喫茶店で待ち合わせをした。
そして、意気投合した二人は、絢奈のマンションに行く事になった。
絢奈の住むマンションは、阪急茨木駅のすぐ近くにあった。