ヤサオトコ
絢奈のマンションを出てから、栗崎は大阪北にある繁華街を、目的も無くただふらふらと漂っていた。そして、ネットカフェで夜を明かした。
こんな生活が2週間位続いた。
手持ちの資金が後わずかになって来た所で、栗崎は寝場所を変えた。
靱公園のベンチ。これが、栗崎の新しいねぐらだった。
栗崎はベンチに座り財布の中を点検した。
「これじゃ、あと何日も持たないぞ。金が尽きた時が、年貢の納め時か」
栗崎がぽつりと独り言を呟いた。
栗崎は、カバンの中に忍ばせていたタオル二枚を手に取ってみた。
「いざという時は、このタオルを結んでわっかにするだけだ」
栗崎が二枚のタオルの端を結んでみた。
結んだタオルを見ていると、以前この公園で自殺を考えていた男のピンク色の紐を、何故か栗崎は思い出した。