ヤサオトコ

 「どう、キタニィで朝食は?」
 「えっ」


 栗崎は郁の聞きなれない言葉にどぎまぎした。


 「北でにぃと笑える朝食の事よ」


 郁がにやにやと笑っている。


 「ティファニーよりリッチだったよ。まじで」


 そう言って、栗崎と郁は顔を見合わせて笑い合った。


 「そうでしょう。〆て30円でこのリッチさよ。信じられない」


 郁が目を細めて言った。


 確かに、今の時代。
 30円では何も出来ない。駄菓子を買うにも足らない。缶コーヒーも買えない。それが、それがである。


 30円でたらふくパンが食べられる。しかも、ひと口サイズのグルメをいろいろ堪能出来て、煎れ立てのコーヒーまで飲める。


 これが、〆て30円。


 病み付きになりそうな安さ、リッチさである。
 二人はお金が無くても、大満足で朝食兼昼食をリッチに終える事が出来た。






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