ヤサオトコ

 その夜。


 郁が靱公園で秘密の衣装ケースからカバンを取り出し、ねぐらのビルに向う途中での事。


 「ちょっと、寄り道をしてもいい」
 「ん」


 「今から夜の食事を調達しに行くからね」


 郁が、いきなり夜の食事の話題を始めた。


 「え、ええっ」

 
 栗崎が驚いて郁の顔を見た。
 

 「な、何、夜の食事」


 栗崎の目が、突然輝いた。


 「無しだと思っていたのに、あるの?」


 栗崎は、夜の食事はてっきり無しだと思っていた。
 先程から、お腹がグーグー鳴っている。


 栗崎はビルに着いてから、パンくずで空腹を満たそう、と考えていた所であった。






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