ヤサオトコ
郁が3粒の錠剤と、紙コップに入った水をドアの隙間に入れた。
栗崎の手が伸びてきて、錠剤と紙コップに入った水を受け取った。
ごくん、ごくん・・・。
トイレのドアの向こうから、薬を飲む音が微かに聞こえて来る。
郁は、隣のトイレのドアに持たれて栗崎がトイレから出て来るのを待っていた。
隣のトイレのドアが開いた。
栗崎が、屈むようにしてトイレから出て来た。手に持っている紙コップを、栗崎が郁に手渡した。
「ありがとう。・・・少し楽になったよ」
栗崎が郁にか細い声で言った。
「礼なんかいいよ。それより、大丈夫?」
「ああ、・・・少し眠りたい」
栗崎が、年寄りのようにとぼとぼと歩き出した。