ヤサオトコ

 晃司は死んだように眠っている。
 郁は語り掛けながら、晃司の体に両腕と頭を付いて、知らず知らずに眠ってしまった。



 翌朝。
 晃司は目を覚ました。


 腹の痛みは、随分と楽になっている。きっと、薬が効いたせいだろう。

 「ありがとう」

 思わず、栗崎の口から、深夜、薬を買いに出掛けてくれた、郁への感謝の言葉が洩れた。


 (ただ、腹の辺りに圧迫感がある。と、いうか、やけに重たい。この重みは、何だ)


 栗崎があれこれ思案しながら、上体を少し持ち上げて腹の方に目をやった。
 視線の先に、郁の髪の毛が見えた。


 「郁!」


 栗崎が、思わず郁に声を掛けた。






 
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