ヤサオトコ
その声で、郁が目を覚ました。
「いけない。私、眠っていたわ。・・・あっ、晃司。お腹の方はどう?大丈夫?」
郁が、寝ぼけ眼で栗崎に容態を尋ねた。
「大分、楽になったよ。郁のお陰だよ。本当にありがとう」
「んん。私は何にも・・・」
郁が、首を大きく左右に振った。
「薬を買いに、深夜の街を出掛けてくれて感謝しているよ。ありがとう。薬のせいで嘘のように良くなったよ。でも、あの薬、良く効くね」
「そうでしょう。お腹が痛くなった時は、断然、征中丸よ。良く効くんだから。本当に良くなって良かったよ」
「でも、あの薬高かっただろう。それに、ホテル代も・・・」
栗崎が、心配そうな顔付きで郁を見詰めた。
「大丈夫よ。私はへそくり貴族、と言ったでしょう」
「ごめんね。大事なへそくりを使わせてしまって。心から礼を言うよ。本当にありがとう」
栗崎が、郁に心から礼を言った。