ヤサオトコ

 「水臭いよ。晃司は。礼なんか言ったりして・・・」
 「そうは、行かないよ。何か、お礼をしないと、こちらの気が済まないよ」


 栗崎が申し訳なさそうに言った。


 「お礼?そんなに言うなら・・・」
 「何?ただし、今の僕が出来る事でなければ、いけないよ」




 「それなら・・・私を抱いてくれる?」




 郁が、突然、突飛な言葉を口から吐き出した。


 「えっーーー」
 「今の晃司にも出来るだろ。晃司、私ってそんなに魅力が無い?」


 郁が、やけに真顔になって言った。


 「そんなことないよ。大有りだよ」
 「本当?」


 「本当だよ。わかった。わかったよ。なら、こっちにおいで」


 栗崎が、ベッドの横の椅子に座っている郁をベッドに誘った。
 郁が、栗崎の横に黙って横になった。そして、栗崎の胸に顔を埋めた。


 「長かった。気が遠くなるほど長かったわ」


 栗崎の胸に顔を埋め、郁が口を開いた。





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