ヤサオトコ
(この環境でどうして生めるんだ。犬や猫じゃあるまいし・・・。しかし、どう説得すればいいのだ)
栗崎は郁をどう説得するか、思いを巡らせていた。
「晃司との子だよ。私、晃司の子が欲しいの。晃司と私の間に出来た子が、どうしても欲しいのよ」
郁は本当にそう思っているのか、目の輝きが異状に輝いていた。
「でも、どうやって・・・」
栗崎がか細い声で呟いた。
「ここで生むよ」
「ここで!このダンボールハウスで。そんなの絶対に無理だよ」
栗崎は郁の言葉に驚いた。
「私、一人で生む。産婆も医者も無しに、一人で生んでやる。金を掛けずに子を生みさえすれば、後はなんとかなる。きっと、なるものだよ」
郁が、突飛な事を言い出した。