ヤサオトコ

 「無茶言うなよ」
 「無茶だってやってやる。野性の動物は、皆自分だけで子を出産しているよ。野生の動物に出来て、人間に出来ない訳は無いはずよ」


 郁が自分の主張を、断固曲げない。


 「野生の動物と人間とは、全く違うよ」


 栗崎は、郁の言葉に呆れ果てていた。


 「私、決心したからね。絶対に生むからね」


 郁の決心は固そうだ。

 「まじか・・・」

 栗崎は、郁の決心の固さを実感した。


 栗崎が河原を歩き始めた。
 郁と距離をおいて、栗崎はいま自分の目の前で起こっている事柄を冷静に考えたかった。


 栗崎が立ち止まった。
 石ころを拾い、栗崎が川に向って投げ付けた。
 それは、大きく弧を描いて川に落ちた。






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