ヤサオトコ

 VIPルームに栗崎を入室させると、支配人はテーブルマナーをひと通り教えた。


 「これが、『ジェントル』のテーブルマナーだ。追々身に付ければいいだろう」


 支配人が命令口調で言った。


 「分かりました」


 栗崎が礼儀正しく答えた。


 「用は、礼儀正しく、相手がVIPである事をわきまえて接客する事。あとは、この空間を夢の、癒しの空間にする事が出来れば、それで結構だ。どうだ。広告代理店上がりの君ならた易いだろう」


 そう言って、支配人が、小さな青いプラスティックの箱を栗崎に手渡した。
 箱の中には、パソコンで作成した顔写真入りの名刺が入っていた。



 ジェントルの知性


 夢崎光
 浪大卒 元広告代理店千通勤務



 名刺には、このようなセールスコピーが書かれていた。






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