ヤサオトコ
栗崎は、トイレを求めて必死で走っていた。
前の信号が、黄色から赤に代わりそうだ。
栗崎は慌てて走った。
その時、向こうから走って来る女性がいた。
二人は激しくぶつかった。
「す、すみません」
「こちらこそ」
二人の持ち物が道路に散乱した。
女性は封筒から出た書類を拾っている。
「全部拾えなくて・・・ご免・・・」
「お腹が痛くって・・・」
女性は、驚いたような顔をして栗崎を見詰めている。
女性に謝ると、栗崎は近くのビルに大急ぎで入った。
「ト・イ・レ・・・」
栗崎は、悲壮な顔をして右に左にトイレを探し捲くった。