ヤサオトコ
営業第2課。
半年ほど前に、栗崎はこの課に配属されていた。
課長の田原の顔だけは見たくはない。
栗崎は急ぎ足で田原の机の前を横切ろうとした。
その時、田原の濁声が栗崎を捕獲した。
「また、遅刻。いったい、どないなってんねん」
田原が関西弁で栗崎をいびり始めた。
「す、すみません」
「ここのところ、毎日遅刻や。女が出来て朝帰りとでもしとんのか。ええ身分やな」
「そんなんじゃありません」
「そんなら、遅刻の理由は何や」
「それが・・・」
「それがどうしたんや」
女子社員の視線が二人に集中している。
田原は女性の視線を意識し始めた。