ヤサオトコ
(信じられない)
小倉は便座に座り、先程撮った携帯電話の写真を眺めていた。
(これを見せれば、課長は驚くぞ)
(いや、大喜びするかもわからない)
小倉の顔から自然と笑みがこぼれた。
(まさか、課長が冷やかした通りになるなんて。事実は小説より奇とは、良く言ったものだ)
(これから、面白い事になるぞ)
小倉はにんまりとほくそ笑んだ。
栗崎と小倉は同期で千通に入社した。
小倉は営業部に配属された。
小倉より10センチ背の高い栗崎。
高校、大学時代、いつも成績がトップで、自分を見下す存在などいないと自身たっぷりだった小倉。
その小倉の自信を粉々に砕いたのが、栗崎の存在だった。