ヤサオトコ

 (信じられない)


 小倉は便座に座り、先程撮った携帯電話の写真を眺めていた。


 (これを見せれば、課長は驚くぞ)
 (いや、大喜びするかもわからない)


 小倉の顔から自然と笑みがこぼれた。


 (まさか、課長が冷やかした通りになるなんて。事実は小説より奇とは、良く言ったものだ)


 (これから、面白い事になるぞ)


 小倉はにんまりとほくそ笑んだ。



 栗崎と小倉は同期で千通に入社した。
 小倉は営業部に配属された。


 小倉より10センチ背の高い栗崎。
 高校、大学時代、いつも成績がトップで、自分を見下す存在などいないと自身たっぷりだった小倉。



 その小倉の自信を粉々に砕いたのが、栗崎の存在だった。







< 60 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop