ヤサオトコ
デスクの上にパソコン。
冷蔵庫。
液晶テレビとDVDレコーダー。
折り畳みの簡易ベッド。
主だった家具はこれだけ。
「シンプルなお部屋ですこと」
絢奈が部屋の中に視線を這わしてひと言。
「何も無いので驚かれたでしょう」
「私、飾り気の無い部屋って好きですわ」
「出来るだけ物を置かないようにしているのです。いつでも引っ越せるようにね」
「引っ越されるのですか」
「今の所、その予定は無いです」
「良かった」
「・・・」
「でも、このお部屋、広いですね」
「僕、狭い部屋は息苦しくて、駄目なんですよ」
「私もそう」
二人は取り留めの無い会話を続けた。