ヤサオトコ

 「男の人の料理する姿っていいですよね」

 絢奈が、栗崎の料理する姿を目を細めて見つめている。


 「そうですかね」
 「私、料理の上手な人と結婚するのが夢ですの」


 「料理はされないのですか」


 栗崎が呆れたような顔をして呟いた。


 「全然、駄目ですの」


 「じゃ、あなたのご主人になられる方は大変だ」
 「今時、普通だと思いますけど」


 (普通じゃないよ)


 栗崎は大声で言ってやりたかった。


 (心のこもった料理には、こんな裏があったのか。最近の女性はどこか狂っている)


 (料理は全然 駄目。よく言うよ)


 栗崎は玉ねぎを切る手に、知らず知らず力を入れていた。
 どうにか、玉ねぎのみじん切りは終了。






 
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