ヤサオトコ
「そんなの、駄目ですよ」
「どうしてですか」
「どうしてもですよ。家に招いたのは、単なるお礼ですよ。それ以上の事はありません」
「こんなに言ってもですか」
「どんなに言われてもです」
「そう・・・」
抱き締めている絢奈の腕の力が、急に弱くなった。
「わかったわよ」
そう言うと、絢奈は腕を解き、バッグをもぎ取った。そして、走って部屋を出て行った。
「ご免なさい」
栗崎は、絢奈の後ろ姿に小さく謝った。