ヤサオトコ

 絢奈は、これ程の屈辱を味わった事がなかった。
 今まで絢奈が誘えば、応じない男はいなかった。
 男は、誰でも意のままになると、絢奈は思っていた。
 が、栗崎は違った。


 (世の中に、自分の意のままにならない男がいるなんて・・・信じられない)


 (憎い!)




 (あいつを殺してやりたい)



 絢奈は悔しくて、悔しくて、走りながら泣いていた。
 出屋敷駅の近くまで来ると、小雨が降り出した。
 その雨は、絢奈の涙を優しく隠すように降り注いだ。





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