ヤサオトコ
橋爪沙幸は、やり手の女性部長。
38歳。独身。
宣伝部のドン。
彼女の意思が、仕事の決定を大きく左右した。
「原ちゃん、ちょっと」
「はい、部長。なんでっしゃろか」
いんぎんな物腰で田原が橋爪に近寄った。
栗崎は、エレベーターの前で田原を待っている。
「原ちゃん、実は頼みがあるねんけど」
沙幸が田原に接近した。
「部長の頼みなら、例え火の中、水の中、何でもお引き受けしまっせ。遠慮無く言っておくなはれ」
田原がいつもの関西弁でオーバーに呟いた。
「頼みと言うのはな。一席設けて欲しいのや」
「何や、そんな事でっか。た易い事ですわ」
「もう少し近付いてくれるか」
沙幸は田原の耳元に小さく呟いた。