ヤサオトコ


 「栗崎君と二人にして欲しいのや」

 沙幸が田原の耳元に小さく言った。


 「えっ、栗崎と二人にでっか」

 田原が驚いた顔をした。


 「そうや。原ちゃんは途中で、適当に抜けて欲しいのや」
 「ああ、そう言う事でっか。任せておくなはれ」


 「ありがとう。その代わり、原ちゃん、悪いようにはせえへんからな」
 「わかってますがな」


 「段取りは原ちゃんに任せるわ」
 「任せてもらえまっか」


 「じゃ、そう言う事で」
 「部長、栗崎は好きに料理してもらってよろしいで。よう言い聞かせておきまっから」


 「頼んだで」
 「任せておくなはれ」


 田原は栗崎の所に戻って来た。


 「何の用事ですか」


 栗崎が田原に尋ねた。


 「たいした事あれへん。ただの野暮用や」


 田原が、何も無かったように答えた。








< 77 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop