ヤサオトコ
「栗崎君と二人にして欲しいのや」
沙幸が田原の耳元に小さく言った。
「えっ、栗崎と二人にでっか」
田原が驚いた顔をした。
「そうや。原ちゃんは途中で、適当に抜けて欲しいのや」
「ああ、そう言う事でっか。任せておくなはれ」
「ありがとう。その代わり、原ちゃん、悪いようにはせえへんからな」
「わかってますがな」
「段取りは原ちゃんに任せるわ」
「任せてもらえまっか」
「じゃ、そう言う事で」
「部長、栗崎は好きに料理してもらってよろしいで。よう言い聞かせておきまっから」
「頼んだで」
「任せておくなはれ」
田原は栗崎の所に戻って来た。
「何の用事ですか」
栗崎が田原に尋ねた。
「たいした事あれへん。ただの野暮用や」
田原が、何も無かったように答えた。