ヤサオトコ
次の日、田原は栗崎を会議室に呼んだ。
「課長、何かご用ですか」
栗崎が用件を田原に尋ねた。
「今週の金曜日は接待や。そのつもりでな」
「スポンサーは、どこですか」
「ホーム食品や。先方はお前をご指名しとる。お前は女性に人気やな」
「・・・」
「部長はお前にえらいご執心や。栗崎、わかってるやろな」
田原が不気味な笑みを浮かべた。
「何をですか」
「ホーム食品は、うちの大事な大事なお得意様や」
「わかってますけど」
「つまりやな。部長の言う事は、何でも聞いたげなあかんと言う事や」
「それは、どう言う意味ですか」
「どんな無理でも聞いたげなあかん、と言う意味や」
田原が語句を強めて言った。
栗崎は課長の真意を計りかねていた。