ヤサオトコ

 「どんな無理でもですか・・・」
 「そうや。どんな無理でもや」


 「無茶苦茶な話じゃないですか。僕にだって聞ける無理と、聞けない無理がありますよ」
 「聞けない無理は無いのや。可愛そうやけど、お前にはな」


 「どうしてですか」


 栗崎はどうしても納得がいかなかった。
 田原が紙袋をテーブルの上に置いた。そして、中から紙おむつを取り出した。


 「これ、お前のやろ」
 「どうして、それが、ここに・・・」


 栗崎は、紙おむつを見て顔色を変えた。


 「ロッカーの前に落ちていたらしいで」
 「いったい誰が」


 「そんなんどうでもええ。それより、お前がおむつ姿やいう事が、皆に知れたらどうなる。会社中の笑い者やで」
 「・・・」


 「栗崎、そうなりたいんか」

 田原が妙に真顔で言った。


 「どうしろと言うのですか」
 「そやから、部長の言いなりになったらええのや。簡単な事やろ」


 「それって、脅迫じゃないですか。人の弱みに付け込むなんて、ひどいですよ」
 「会社の為やないか」
 「僕は聞けない事は断りますからね」


 栗崎が毅然とした態度を見せた。












< 79 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop