ヤサオトコ
「どんな無理でもですか・・・」
「そうや。どんな無理でもや」
「無茶苦茶な話じゃないですか。僕にだって聞ける無理と、聞けない無理がありますよ」
「聞けない無理は無いのや。可愛そうやけど、お前にはな」
「どうしてですか」
栗崎はどうしても納得がいかなかった。
田原が紙袋をテーブルの上に置いた。そして、中から紙おむつを取り出した。
「これ、お前のやろ」
「どうして、それが、ここに・・・」
栗崎は、紙おむつを見て顔色を変えた。
「ロッカーの前に落ちていたらしいで」
「いったい誰が」
「そんなんどうでもええ。それより、お前がおむつ姿やいう事が、皆に知れたらどうなる。会社中の笑い者やで」
「・・・」
「栗崎、そうなりたいんか」
田原が妙に真顔で言った。
「どうしろと言うのですか」
「そやから、部長の言いなりになったらええのや。簡単な事やろ」
「それって、脅迫じゃないですか。人の弱みに付け込むなんて、ひどいですよ」
「会社の為やないか」
「僕は聞けない事は断りますからね」
栗崎が毅然とした態度を見せた。