ヤサオトコ
「お母さん」
「お母さ~ん」
栗崎が大声を張り上げた。
「お母さんてば・・・」
「僕がこんなに・・・呼んでいるのに・・・」
「こらっ、房江。可愛い息子の・・・お帰りだ。出て来い!」
栗崎はふらふらふらふらしている。
栗崎が二階を見上げて房江を呼んだ。
応答は無い。
栗崎は右にふらり、左にふらり。
足元が定まらない。
「これだけ呼んでも・・・ウイッ、出てこない」
「ようし、僕にも覚悟があるぞ。・・・止めるなら、今のうちですよ・・・ウイッ」
「出てこないなら・・やるからね」
栗崎が、背広の上着を脱いで上に放り上げた。