ヤサオトコ

 「図星みたいやな。ウシッシッ・・・」


 田原が卑猥な笑みを浮かべている。

 「・・・」

 栗崎は下を向いて、じっと田原のいびりに耐えていた。


 「おむつで、はいポーズ。どや、超セクシーやろ。ウハハハ・・・」


 田原は腹を抱えて笑い転げる始末。
 女子社員達は、田原の言葉と馬鹿笑いに呆れ、冷ややかに田原を見詰めている。

 栗崎の顔は、今にも泣き出しそうだ。


 「課長、ふざけないで下さい。栗崎さんが可愛そうです」

 美奈代が怒りの声を上げた。

 「ああ、わかった。わかった。ほんの冗談や」


 田原は女子社員達の軽蔑した顔に気が付いた。
 気まずさを感じたのか、咳払いをして田原は、急いで自分の席に戻り腰を下ろした。


 栗崎は勇気ある発言をした美奈代を見て、目で一礼をした。
 自分の席に着くと、また下腹がしくしく痛み出した。


 栗崎は必死で我慢をした。
 仕事が手に付かない。
 昼休み時間までを、栗崎は途方も無く長く感じていた。






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