ヤサオトコ

 カッターシャツは、舞うようにひらひらと落ちて行った。


 「お待ち…どう様・・・これからが・・・お・た・の・し・み・ウイッ」


 栗崎がTシャツを脱いで、夜空に向って放り投げた。


 プ~プップ~。


 その時、小型トラックの運転手が、クラクションを鳴らした。



 「馬鹿野郎!ひき殺すぞ」



 運転手が窓を開けて叫んだ。


 「殺せるものなら・・・殺してみ~ろ」


 栗崎がトラックの前でよろけた。
 運転手が、ライトに照らされた上半身裸の栗崎を見た。


 「この変態野郎が」


 運転手は車から出ると、栗崎を脇に押し倒した。


 「変態野郎は、そこでおねんねしてな」


 捨て台詞を残すと、運転手は車に乗り込んだ。
 小型トラックが、栗崎の脱ぎ捨てた衣服の上を走って行く。
 栗崎は目を大きく見開いて、それを見ていた。








 
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