ヤサオトコ


 一瞬、酔いは醒めていた。

 
 栗崎の意識は、この時、不思議なほど正常だった。


 抜け殻の無残な姿。

 栗崎の脱いだ衣服が、惨めな姿で地面に散らばっている。
 栗崎は自分がひき殺されたようで、涙が出るほど悲しかった。


 「馬鹿野郎!」


 「くそったれが・・・」



 栗崎が車に向って大声を上げた。


 「どいつも、こいつも・・・俺を馬鹿にしやがって・・・」


 「馬鹿にしやがって・・・」


 栗崎は、目頭を押さえながら車が小さくなるまで見送っていた。







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