そして少女は剣になった
00:独房のようなその部屋で
『制限時間は十時間。生き残った者は合格。死んだ者はそれまで。手を抜いても死刑だ』
宵闇の樹海を思わせる地下室。
壁、床、天井全てがコンクリートで出来た簡素な造りである。
講堂のように広く大きな空間。陰鬱な室内を照らすのは、天井を這う剥き出しのコードにぶら下がった、幾つもの豆電球だった。
重苦しい両開きの鉄扉は、現在内側からは開ける事はできない。その真上にデジタルのカウンターがぽつりとあり、画面は十時間で止まっている。
そこに居るだけでも精神がおかしくなりそうだ。その要因となるのは無論、取り囲むように頭上に設置された足場。そこでライフルを構えた軍人達が、銃口を下に居る人々に向けているからだろう。
この空間は、組織が用意したある採用試験を行う為に造られた。その内容は余りにも非倫理的で、世間体を気にしてか、一般公開はされていない。
十段階に渡る試験を経て、やっとの思いでこの世界的企業に入社できるのだが、九段階を通過して初めて明かされるその最終試験が異常だった。異常だったが故に、最終試験は自己責任で、参加の有無を各人に決めさせる。
その内容は口外無用の為、最終試験目前にして断念した者は須(スベカラ)く試験時の記憶を消される。その内容が……。
――バトルロワイヤル。
入社さえすれば、下っ端の仕事でも『月収数百万』の金が振り込まれる。
それがどこかの小企業による広告なら信じられなかっただろうが、その会社が自身の開いたサイトで勧誘の広告を更新し、更に『世界的トップ企業』の称号を持っているからこそ皆が信じ、ここに居るのだ。
――先進国セレスティアの中心に位置する、『サテライト社』の地下に。
しかしながらそれが全てと言うわけではない。
無論多額の借金を抱えた者も居れば、死刑囚までもが参加しているらしい。いずれも脅迫による強制参加だった。
強制参加故に、九段階分の無理難題は免除。死への特急券がプレゼントされたわけである。