そして少女は剣になった



「急に英語が上手くなったわね」

「お、マジで?」

「小学生レベルの発音に喜ばない」

「ちぇっ、これでもかなーり勉強したんだけどなあ。あ、ちなみにザッツライトの『ライト』って『太陽』と掛けたんだぜ?」

「あなた馬鹿でしょ。太陽は『sun』。しかもあなたが言ったのは『light』じゃなくて『right』よ」

「冗談だよ本気にすんな馬鹿」

「なにムキになってるのよ馬鹿」

「は? ムキになってねーし」

「なってるじゃないバーカ」

「馬鹿馬鹿うっせえんだよバーカ!」


 透明な箱に運ばれながら、幼い口喧嘩も上っていった。自分もムキになっている事に気付くと、目上のフロア表示を確認し咳払い。


「そろそろ着くわよ。シャキッとしなさい」

「お前もな」


 少しの浮力を感じ、三人を乗せるカプセルは停止した。


「どうぞ」


 スーツの男は身を引いて言った。無遠慮にも、無言で歩を進めるイリスに、慌て気味の氷衣は後を追う。


 エレベーターを抜けるとまず初めに感じたのは、上質で包み込むような生地の感触。部屋の端まで伸びる赤い絨毯だ。


 最上階にも関わらず、天井は意外にも高かった。雪よりも白い天井。左右に屋上へ繋がる螺旋階段がある。
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