【企】微熱を下げて(挿絵付)
「高畑はこっち」
「え?」
コトンとデスクに置かれたのは市販の風邪薬。
「早く帰って、これ飲みなさい」
「えっと……主任……?」
「顔赤いし、頭痛がヒドそうだし……どうせ、昨日裸でやけ酒でも呑んでたんだろ」
「なっ……! 裸じゃないですっ」
キャミソールに短パンという薄着だったけど裸ではない!
そっか、この頭痛の正体は二日酔いではなく、風邪か……って、どうして主任が“やけ酒”ということを知ってるの!
「……見てられないんだよ」
ポツリと呟かれた言葉。
どういう意味かわからなくて、目を瞬かせながら主任を見た。
相変わらずダラッとした雰囲気なのに……なぜか、ちょっと眩しく見える。
これも風邪のせい、だよね?
「俺の仕事は片付いたから、高畑の仕事もらうぞ」
「片付いたんじゃなくて、僕に押し付けたんですよね?」
「鈍感なお前にそれくらい押し付けたって、神様は許してくれるだろうよ」
「なんですか、鈍感って……」
田村はブツブツ言いながらも、仕事を再開する。
私は目の前で繰り広げられているやりとりを、茫然としたまま見つめていた。
主任は私に向き直ると、顔を覗き込んできた。