すずらんとナイフ
メールアドレスを託した日の夜、すずは落ち着かない気持ちで、自室でテレビを見ていた。
(ああ…もうすぐ10時半になる…
やっぱりダメか…迷惑だったかな…)
すずは溜息をついた。
(大沢さんだって立場あるもんね…
馬鹿なことしちゃったかな…?)
諦めかけたその時、スマホが鳴った。
慌ててスマホを手に取る。
見知らぬアドレスからメールが来ていた。
祈るような気持ちでメールを開くとタイトルに
[大沢勇希です]とあった。
(うわあ!)
すずの心臓は大きく波打った。
本文を読む。
[名刺ありがとう。俺はメールが苦手だから、残念だけれど、メル友にはなれないよ。
でも、三浦さんのこともっと知りたいから、今度、食事に行こうよ。
いつなら大丈夫?]
『…やったあ!』
すずは叫び、ベッドの上に倒れ込んだ。
恵はプラスチックの茶碗に入った茶を、ズズッと啜った。
「またまたラブラブエピソードありがとう。ヘェ〜…じゃ、あのビデオ男と別れて、ほんと正解だったね」
恵の言葉に、
すずは飯粒をぷっと吹いた。
「やめてよ…」
恵を睨みながら、すずは久しぶりに
あいつのことを思い出した。