すずらんとナイフ
会社の終業時刻は5時半だけれど、ラウンジは5時で店仕舞いになる。
おしゃべりしながら、ゆっくり帰り支度しても5時半には家路につけた。
すずと恵は、毎日、駅前のマックでお茶してから帰った。
以前、すずが恵に、前彼のビデオの話をしたのも、このマックだった。
ウケにウケた。
『何それ?ヤッバーイ!流出、流出〜』
恵は楽しそうにはしゃいで、ジュースのカップを倒しそうになっていた。
「…あれ?恵、
今日はアップルパイ食べないの?」
トレイに飲み物二つだけ載せて、戻ってきた恵にすずは訊く。
「うん…」
恵は甘いものが大好きで、このところアップルパイを毎日のように食べていた。
「やめるんだ」
腰掛けるなり、恵が言った。