すずらんとナイフ





すずと勇希は用がない限り、土日の休日を一緒に過ごした。

すずは土曜日の昼まえに勇希が暮らすワンルームマンションを訪ね、一晩お泊まりして、日曜日の夕方帰った。


勇希の住むマンションは駅から3分程度という利便性のよい場所にあり、すずの家の最寄駅からは五駅ほど離れていた。

ロフト付きの八畳ほどの部屋には、すずの化粧品や、小物類、衣類などがあちこちに置いてあった。


母親にも「彼の家に泊まるね」と言っていた。


「そんなことしてないで、早く結婚したら?」

母親はそういうが、相手がいることでこればかりは仕方が無い。

まだ、結婚のケの字も気配がなかった。


勇希はドライブが好きで、毎週すずを車に乗せ、どこかに連れていってくれた。


今日は、すずのリクエストで横浜八景島に行った。

乗り物に乗りたかった訳でも、水族館に行きたかった訳でもない。

外気は冷たいけれど、日差しが暖かな今日、穏やかに凪ぐ海が見たかった。


広場の芝生に保温シートを広げ、勇希と並んで座った。

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