すずらんとナイフ
宮古島
朝、9時前。いつものように田沢理香が来場者リストを持ってラウンジに来た。
ユニフォームの紺のパンツスーツ姿だが、首にチーフはなく、白いブラウスの襟だけがのぞいている。
「今日、来場は6組しかいないのよ」
すずにリストを手渡しながら、理香はいった。
「だから、コンパニオンは矢崎さんと加藤さんだけなの。
お昼、忙しいようだったら、私のデスクに内線かけてくれる?手伝いに行くから。
午後は、すずちゃんと加藤さんの二人だけでお願いね?」
すずは、はい、はい、と返事をしながら、午後はまた、史歩と二人だけか……と心の中で溜息をついた。
人数が少ない時は朝礼は行わず、こんなふうに簡単な打ち合わせだけで済ませた。
「ねえ、すずちゃん!」
理香がにやりと笑いながら、肘ですずの腕をつついた。
「大沢君と宮古島行くんだって?
きいたわよ〜大沢君から」
「あ、そうなんです!
宮古島、いくんですよお」
すずは照れながら、胸を張った。
「宮古島って、誰が行くんですか?」