すずらんとナイフ
過去
昼食のうどんを食べ終わり、キッチンで食器を洗うすずに勇希は、
「そんなの俺があとでやるよ」
と言って、後ろからすずを抱きしめた。
「すずに風邪が移っちゃうかなあ?
治り際が一番移りやすいっていうよね…」
勇希は、すずの耳にキスをしながら囁いた。
くすぐったくて、すずはクスクス笑いながら答えた。
「聞いたことある。昔、よくお母さんが言ってた。本当かわからないけど」
「…試そうか」
勇希の声は少し掠れていた。
午後4時。
外はまだ明るいのに、すずと勇希はベッドに潜り込んだままだ。
外から子ども達が遊ぶ声が聞こえてくる。
外の世界とは全然違う薄暗い密室に、
裸のままの自分と勇希。
勇希は隣で寝ていた。
軽く鼾をかきながら。
すずは少しうとうとしただけで、目が覚めてしまった。
起き出すには気怠かった。