すずらんとナイフ



『事件のあと、私は皆から責められた。アバズレとか、死んじゃえとか電話が一日中かかってきて、親にも殴られた。
誰もが白い目で私を見た。先生にも見捨てられて退学になった。
私は川霧が好きだったのに、昇が別れてくれなくて困ってた。

川霧は何もしてない!
なのに、なんで刺されなきゃいけないの!
なんで私が責められなきゃならないの!一番悪いのは昇なのに!』


史歩は段々、涙声になり目から涙がこぼれ落ちた。


『川霧は被害者なのに学校にいられなくなくなって…私、川霧が可哀想で結婚までした。
川霧は二股をしていた私のことをゆるしてくれたの。
でも、やっぱり普通にはなれなくて離婚することになった。

私がどんなに大変だったか、あんたにはわからないでしょ?
私は優しくされたいの。
それで心が癒えるの。

やっと…やっと心の傷が治りかけているのに、平気で酷いこと言わないでよ…』


史歩は嗚咽し始めた。


ーーなんなの、この被害者意識……


すずは心から白けた。


自分の傷を癒す為に、
渡辺さんの寝たっていうの?

何も知らない身重の渡辺さんの奥さんはどうなるの?


彼女の為にも史歩を許すことは、出来なかった。


『諸悪の根源は史歩じゃない。
いくら好きだからって、
いくら若気の至りだって、普通あんなとこでしないよ。
同じ女として恥ずかしかったよ。

噂になったのは、自業自得!』


これ以上、史歩と一緒にいるのは時間の無駄だ。

すずは急いで自分の鞄を腕に掛けると、ロッカーの扉を閉め、その場を立ち去った。



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