未来へのボール*FALL*
Ⅷ 抱えているモノ
〔side朔杜〕
「――…で、今日。
ラルと約1年ぶりに再会したんだ。」
長く、短い昔話が今終わった。
話してみたら30分程しか無かったが、
目の前にいる椿にとっては
とても長い時間に感じられただろう。
まだ若干懐かしさを残した瞳に
俺を映して続ける椿。
「本当、何回も嘘だって思った。
学校に行っても、
在るのは机と椅子だけ。
そこに座っているハズの
ラルは居ない。」
手に持っているバスケットボールに
グッと力を入れたのが分かった。
――哀しかったんだろう、と。
いや、それ以上に。
辛かったんだろう…と。
「……椿、お前は大丈夫だったのか?」
「え。」
俺の唐突な質問に
一瞬訳が分からないという
表情を見せる椿。
気になったんだ。
かえがえのない人を失って、
しかもそれが2度めで。
もし俺が同じ状況だったら、
立ち直れない程の闇に
包まれてしまうだろうと思ったから。
「……平気、では無かった。
けど、マリの時とは違って、
スイやラン。ミナトが側に居てくれた。
だから、何とかこうして
ここに立ってる。」
スイ。
おそらく真中の蓮野睡(ハスノ スイ)だろう。
ランは、鈴木蘭(スズキ ラン)。
そしてミナトは、桜李湊。
皆、ラルのチームメイトで、
女子バスケ界の頂点だった
真中女子バスケ部の
レギュラーだった才能溢れる人物だ。
「皆に言われて、支えて貰いながら
今日までラルを捜してたんだ。
モデルをやってるのは、
生活費の為もあるけど
ロケとかでいろんな場所に行くから。
ロケが終わる度、
あたしはラルを捜してた。」
大人気モデルの、
モデルを始めた理由がラルという
1人の友達を捜すためだった。