未来へのボール*FALL*

観客席を横目で見るのに夢中で、

あたしは監督の呼び掛けに

気づかなかった。


「ラル!」


「えっ?」

近くのスイに呼ばれてハッとする。


「監督、ラルのこと呼んでるよ?」


「え?ホント?

ごめんスイ、あいがとう。」

あたしはスイにお礼を言って、

監督の所まで小走りで向かった。


「監督、何か?」

いつものように、

何かアドバイスをくれるのだろうか。

あたしは呑気に

そんなことを考えていた。


「橘、落ち着いて聞け。」

監督は、いつもより一層真顔であたしに

言葉を発してきた。


「………はい…?」

何を、落ち着いて…なんだろう。

そう、思った。


この次の言葉を聞く、瞬間までは。





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