未来へのボール*FALL*
広場に着く。
やはりそこにはボールが転がっていて。
椿は、そのボールを拾い、
軽くドリブルをする。
「……あたしがラルと会ったのは、
あたしとラルが中2の初夏。」
《ダンッダンッ》
規則的に鳴るリズム。
規則的に跳ねるボール。
その中で聞こえる、椿の声。
「その日はどしゃ降りで、
あたしはずぶ濡れになりながら
ここにうずくまってた。」
ドリブルを止めて、シュートを打つ。
ラル程ではないが綺麗なフォーム。
どこにも突っ掛かることなく、
ゴールに吸い込まれて行った。
「これからを考えて、
絶望に浸っていた時。
突然、雨が止んだ気がした。」
ボールはゴールをすり抜けると、
バウンドしながら、
椿の方に戻ってきた。
「見上げたら、部活帰りのラルが居た。
自分が濡れながら、
あたしの上に傘を掲げてた。
それが、あたしとラルの出会い。」